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える

落日のイノセンス1-4

2013年09月13日 00:36
 悠人が自宅へ帰ったのは午前十時を過ぎた頃だった。ただ隣の家に行くだけなのだが、シン達は律儀に見送りまでした。悠人は彼等の気遣いに感謝した。  家に帰ると、固定電話の光が目に入った。留守番電話が届いていた。悠人は再生ボタンを押した。機械音声による案内の後、録音された留守番電話が再生された。  スピーカーから爽やかな男の声がした。 『九条です。大切な話があるので、これを聞いたら連絡をください』  悠人はリダイヤルのボタンを押した。数回のコール音が響いた。 「やあ、悠人。おはよう。」  若い男が応答した。 「よう、焰。留守番を聞いたぞ。話って何だ?」  悠人は突慳貪に尋ねた。 「悠人、今日は暇かな

落日のイノセンス1-3

2013年08月19日 16:49
 朝日に刺激されて悠人は重い瞼を上げた。不思議と頭はすっきりとしていた。お陰ですぐに異変に気がついた。リビングで眠っていたはずが、悠人が目覚めたのは見知らぬ部屋だった。二つの箪笥とベッドしかない殺風景な部屋。訝しみながら悠人は部屋の扉をゆっくりと開けた。廊下は見知った景色だった。西城の家である。いつベッドに横たわったのか、などと記憶を辿りながら悠人はリビングの扉を開けた。そこに西城姉妹の姿は無かったが、代わりに男が一人、縁側に座っていた。 「シンさん、おはようございます」  悠人はぺこりとお辞儀した。男の名前は西城シン。美雪の夫である。 「おはよう。良く眠れたか?」  二十代の若い容貌からは想

落日のイノセンス1-2

2013年08月01日 20:26
 悠人が帰宅したのは午後十時を過ぎていた。精霊を自称する少女アリスに絡まれたせいで一時間以上も帰りが遅くなってしまった。普段なら夜食を食べながら勉強をする所だが、今の彼にはそれを行なう気力は無かった。肝心の夜食もアリスの襲撃でダメになってしまっていた。  どうせ今日は金曜日、悠人はそう考え今日は眠る事にした。小腹が空いていたが、睡眠の邪魔になるとは感じなかった。 「こんばんは」  女性の声がした。声の主は隣に住む三姉妹の長女だった。長女は結婚して子供もいる。一人暮らしの悠人を気にかけてくれる優しい家族である。悠人はぺこりと会釈した。 「こんばんは。西城さん達も帰りですか?」 「映画です」  三

落日のイノセンス 1-1

2013年07月22日 22:24
 春先の夜。中上悠人は平穏を失った。とある出会いが全ての始まりだった。  料亭で皿洗いのアルバイトを終えた悠人は自転車に乗って家に向かっていた。交差点で赤信号に足留めを食っていた、その瞬間、目の前が真っ白になった。ストロボのようなフラッシュが瞬いたのだ。悠人はバランスを崩して横転した。誰かに体を抱えられる感触を受けながら、悠人は体の自由を奪われた。 「やっと起きた」  若々しい声がした。悠人が顔を上げると、そこには銀髪の少女が立っていた。悠人は部屋中見渡した。少女以外には誰もいなかった。物という物も無い。床や壁の汚れ具合からどこかの廃屋という事は想像できた。悠人は立ち上がろうと試みたが、手足を

落日のイノセンス 序章

2013年07月17日 21:33
 能力者。ホモ・サピエンスを超える人類。能力者は人類よりも高い身体能力と、神業の如き超能力を持っていた。  能力者の生態の研究の為に、北大西洋沖の公海に巨大な人工島が建設された。能力者達は次々とその島へ送られた。島は人口の増加に伴い成長を続けた。能力者の殆どが未成年であった為に、島には教育施設が増設されるようになった。高度な研究機関な為に、教育の質も高かった。  住民達の間にはヒエラルキーが誕生した。最下層には非能力者が、そして能力が強い程上の階級へ。最上級の能力者達は貴族と自称し、島の政権を掌握した。  貴族達は独立を宣言した。無論、世界は賛否に割れた。それは能力者を人として認めるか、という