悠人が自宅へ帰ったのは午前十時を過ぎた頃だった。ただ隣の家に行くだけなのだが、シン達は律儀に見送りまでした。悠人は彼等の気遣いに感謝した。
家に帰ると、固定電話の光が目に入った。留守番電話が届いていた。悠人は再生ボタンを押した。機械音声による案内の後、録音された留守番電話が再生された。
スピーカーから爽やかな男の声がした。
『九条です。大切な話があるので、これを聞いたら連絡をください』
悠人はリダイヤルのボタンを押した。数回のコール音が響いた。
「やあ、悠人。おはよう。」
若い男が応答した。
「よう、焰。留守番を聞いたぞ。話って何だ?」
悠人は突慳貪に尋ねた。
「悠人、今日は暇かな?」
焰が尋ね返した。
「まあ、用事は無いな」
「直接話したいんだ。十二時に駅前で待ち合わせで良いかな」
友人からの誘いを断る理由は無かった。
「解った」
簡潔に返答して、悠人は受話器を置いた。
「後二時間か……何をして過ごそうか」
あれこれと時間つぶしを考えたが、何も思いつかなかった。家の中でじっとしているのも退屈なので、悠人は散歩する事にした。
財布と家の鍵だけをポケットにしまい、安物の腕時計を左腕に巻き付けた。家から出て鍵をかけると、悠人は最寄りの駅へ向かった。約束の時刻まで駅前の本屋で時間を潰そうと考えたのだ。億劫な足取りで悠人は駅へ向かった。
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